これまでは、AutoCADの点線表示の不具合について、なぜ起こるのかを考えてきました。
点線選んだつもりなのに、なぜか連続した線しか見えない、またその逆などのメカニズムを整理しました。
その原因が「線種尺度」によって引き起こされているということもわかりました。
AutoCADはどこまでいっても「尺度」に悩まされます。
しかし、逆に言うと、この辺を押さえてしまえば、自由度が無限な究極のソフトとして自分の武器になりますのでぜひとも理解を深めて頂きたいと思います。
まずは絶対線種尺度で換算しよう
線の尺度は、絶対線種尺度で考えてください、と何度も述べました。
絶対線種尺度1.0はわかったけど、具体的な計算方法を考えていきましょう。
絶対線種尺度と線種尺度は異なる
線種尺度だけでもわからないのに、絶対線種尺度なんてわけわからん言葉出すなよ!という声が聞こえてきそうです(汗)
もっと残念なお知らせは、「絶対線種尺度」の他に最終的に出力(印刷)するときまでの尺度「最終絶対線種尺度」まで出てきます(汗)(汗)
こういう風になんらかの筋の通る言葉を作らないと、「線種尺度」を理解してもらうことができないと思いました。
AutoCADの「線種尺度」はものなぜか凄く紛らわしく作ってあるのです。初心者を遠ざけている、とさえ思うことがあります。
「線種尺度」というと、オブジェクトプロパティー管理の「線種尺度」を思い浮かべる人もいますが、これだけを見るだけではだめなのです。
「(本当の)線種尺度」を決めるパラメーターが他にもあるからです。
それは、線種管理ダイアログボックスにある「グローバル線種尺度」と「現在のオブジェクト尺度」です。
これらのうち、「現在のオブジェクト尺度」については、ややこしいですし、事実上あまり意味をなさない尺度ですので「常時1.0」として考えないようにしてください。
※もし受領した図面で「現在のオブジェクト尺度」が1.0以外なら「1.0」にしてしまいましょう!
「現在のオブジェクト尺度」 を考えないようにしましたので、もう一つのパラメーター「グローバル線種尺度」が 変わると「(本当の)線種尺度」も変わってしまうのです。

絶対線種尺度の計算方法
グローバル線種尺度の活用例は別途記事にしますが、ここで言う「(本当の)線種尺度」(絶対線種尺度)の関係はどうなるかと言うと、
(絶対線種尺度)=(グローバル線種尺度)×(線種尺度)
の関係があります。当然ですが、絶対線種尺度1.0とは、右辺の2つが1.0の時のことです。線種尺度のほんとうの初期値のようなものでしょうか。

ですから例えば、「線種尺度」が1でも「グローバル線種尺度」が1000であれば、実際書かれている線の尺度は、「1000」となります。
とてもわかり辛いです。ですから絶対的な指標として「絶対線種尺度」と呼ぶことにしたのです。
他社から受領した図面で、オブジェクトのプロパティ管理での線種尺度が「1000」になっているけど、絶対線種尺度に換算したら、「10」だった、のようなことがしばしばあるのです。
相対的な話になるので、苦手な方は逃げ出したくなると思います。筆者もそうです。
わかる人には「なんでこんなことで悩んでんの?」みたいに言われますが、理解できないものは理解できないのです。
ですので、できるだけ「数値」に換算してしまうことが重要です。
目次に戻る←←←出力(印刷)まで考えると「最終絶対線種尺度」が必要になってくる!
AutoCADはどこまで言っても「尺度」がついてまわります。
一生懸命図面を書いたその先に待っているのが紙やPDFへの出力です。ここでまた尺度が出てきます。
ここでは、ペーパー空間の尺度の話は一通りご理解していただいている、として説明を進めます。
簡単に言うと、土木図面を作成する際には、モデル空間上で1:1図面を作成します。それをペーパー空間で実際の紙の縮尺に落とし込んで出力(印刷)するのが基本的な流れとなります。
モデル空間で設定した「絶対線種尺度」は、ペーパー空間で実際の出力尺度に縮小されるのに伴って縮小されるのです。
最終絶対線種尺度の計算
最終絶対線種尺度とは書きましたが、実際は単に「絶対線種尺度」です。
絶対線種尺度が基本となり、単に印刷関係の尺度で補正したものになります。
後に、大きな意味をもってくるため、「絶対・・・」などと仰々しいネーミングにしました。
一番大事なのはあくまで「絶対線種尺度」です。
それでは、最終絶対線種尺度の計算方法ですが、印刷に伴って縮小されるわけですから、
(最終絶対線種尺度)=(絶対線種尺度)÷(図面尺度)・・・①
となります。そして図面尺度はどこみればいいの?というと、「ビューポート」尺度となります。

さらに忘れてはならないのが、「印刷尺度」です。紙自体の尺度を変えることができる機能です。
A1→A3にするときによく使う機能です。あたかもA1の図面であるかのように気軽に縮小することができる機能です。
よって、①の図面尺度は、
(図面尺度)=(ビューポート尺度)×(印刷尺度)
となります。

①に代入したあげて、改めて最終絶対線種尺度は、
(最終絶対線種尺度)=(絶対線種尺度)/{(ビューポート尺度)×(印刷尺度)}
紙(あるいはPDF)で印刷すると最終的に出力される線種尺度ということです。
下の画像は、A1で出力した画像です。各線種尺度が「最終絶対線種尺度」になる過程を表にしてしみました。

グローバル線種尺度を1.0にして、オブジェクトプロパティ管理にて各線の線種設定を設定しました。これらの積が絶対線種尺度(図面画像下段)です。
そして、これをペーパー空間にて印刷します。
その時の図面尺度設定は以下のようになります。

これらの資料から最終的な絶対線種尺度「最終絶対線種尺度」が出てきます。
最終絶対線種尺度 を使用することによって、わかり辛かった線種尺度が整理できます。

最終絶対線種尺度を同じ値にすれば、同じ線間隔として表示されるのですから。
目次に戻る←←←今回まとめ
線種尺度でわけがわからなくなったら、絶対線種尺度が現在どうなっているのかを値を用いて考えるとわかりやすいです。
自分で作成する分には、今回のお話で線種尺度設定してしまえば済んでしまいます。
しかし、図面の多くは、他社(者)が作成した図面の編集となります。
その場合、様々なトラップが仕込んであり、思い通りの線種尺度になってくれないことがほとんどです。
ですが、なんとなくわかっていただけたと思いますが、結局、絶対尺度に換算してやれば理解できるケースがほとんどです。
最終絶対線種尺度まで換算してやれば完璧です。ですが、この最終絶対線種尺度については、別記事で改めて書きますが、一枚の紙に一つの窓(ビューポート)であれば実際問題関係ありません。
グローバル線種尺度と線種尺度の関係である「絶対線種尺度」だけの考え方でほとんどの事は済んでしまいます。
次回は、最適な線種尺度について考えていきたいと思います。
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この考え方を身に着ければ、線種尺度は攻略できます!