前回のまでのお話で、「図面の尺度」と「線種尺度」は必ずしも連動しない、ということがわかりました。
あくまでも線種尺度は、「尺度1」に対する見え方の倍率だということも例を用いて示しました。とても面倒ですが、それだけAutoCADには自由度があるということを意味します。
それはわかったけど、じゃあ、結局どうすればいいの?というお話になります。
今回は、そのへんの対応を考えてきます。
目次
土木製図に関しては、尺度に規定はない
記事を書くにあたって、そもそも何かしらの基準ってあるの?ということが気になりました。
筆者は二十年以上土木の業界に身を置いています。発注者側で発注図面を製図したこともあります。しかし、レイヤやら線の太さやらの基準はやたらとあるけど、はて?線の尺度に関しては何かあったっけ?と思ったのです。
いまのいままで何かしらの基準というものを意識したことがありませんでした。
「CAD製図基準(平成28年3月)国土交通省」には特に記載なし
まずは、国交省の「 CAD製図基準(平成28年3月)」を確認してみました。土木製図する者にとってのバイブル的な書類です。
1_5_10に線に関する規定がありました。これによると、線の種類、太さには細かい規定が書いてありました。今回は特段関係のないことなのでこの辺は触れません。
点線の間隔、すなわち「線種尺度」に関する規定はないようです。
「土木CAD製図基準(案)(平成17年12月) 土木学会」には記述あり
ややこしいですが、土木学会というところも独自の製図基準があります。
とても権威臭いですね~。国交省のものとほぼほぼ同じ内容ですが、こちらは、多少マニアックな記述になっています。
こちらには、線種尺度に関する記述がありました。JISには規定があるそうです。
JIS Z8321:2000「CAD に用いる線」では,線の要素(点,長線,短線,極短線,すき間)の長さが,線の太さの基準に応じて変更する必要がある。しかし,厳密に適用すると図面が見にくくなる場合があるため,本基準では線の種類が目視により判別が出きればよいとしている。
土木CAD製図基準(案)平成17年12月土木学会
要は、見えればいいよ、ということ
上の2つの基準から判断するに、「見せたい線に見えればいいよ」ということのようです。
ですので、究極的には書き手の見え方で一番よいものを採用する、ということと言ってもいいでしょう。
図面尺度に対しての最適線種尺度は「線種尺度見本」で目安を作る
なんだか突き放されたような感じです。結局どうすればいいんだ!という思いがします。
結局は自分で一番良い線種尺度を選ぶにしても、なにか目安がほしいな、と思うわけです。
そこで、広くWEBで線種尺度に関する記事を探してみました。これだ!というものは残念ながら見つけることができませんでした。
ここでは、実証的に(泥臭く)、サンプル図面を掲載したいと思います。
A1やA3サイズの用紙でこの「最終絶対線種尺度」で書けばこうなるのか、というような「見本」を示したいと思います。
A1,DASHED(点線),S=1/50の線種尺度見本
今の時代、ほとんど使われなくなったA1ですが、土木図面の基本サイズです。
最終絶対線種尺度1(線種尺度が50)~2(同100)の間くらいにの尺度感が筆者的には好きです。
お好みの尺度感でお使いください。

最終絶対線尺度への換算表は以下の表になります。

PDFデータをダウンロードできるようにしておきます。
A3,DASHED(点線),S=1/100の線種尺度見本
実質、スタンダード図面サイズとなりますA3サイズです。
AutoCADでは一般的に、A1サイズで書いて、ペーパー空間でA3に縮小して出力します。
ビューポート尺度を1/100にするか、印刷の尺度を1/2にするか、方法は二つあります。
今回は、印刷の尺度を1/2にしました。
最終絶対線種尺度がA1の1/2となることがわかると思います。
こちらは、 最終絶対線種尺度0.5(線種尺度が50)~1.0(同100)の間くらいにあれば表示がうまくできそうですね。
A1とA3の最終絶対線種尺度1.0を比べてみると、A3、1/100のほうが線の間隔が広いように一見見えます。むしろA3の最終絶対線種尺度2.0と同じじゃね?と思えます。
ですが、実際は、A1サイズとA3を実寸で印刷すると、A3は1/2縮小されるはずですので、線間隔も1/2縮小されて見えるはずです。
画面での見た目はA1と変わりませんが紙に出力したときに初めて差がわかるということになります。

最終絶対線尺度への換算表は以下の表になります。

こちらもPDFをダウンロードできるようにしておきます。
線種尺度見本の注意点とまとめ
いかがでしたでしょうか。絶対線種尺度に換算してみると、どの図面尺度でみても理屈的には同じ尺度となります。
相対的な尺度で考えるよりも絶対尺度で考えると(面倒くさいけど)わかりやすくなったのではないでしょうか。
A3版を印刷出力して、だいたいの当たりをつけるのにいいかもしれません。
注意点として、上の項で見た図面はあくまでみなさんの今ご覧になっているモニター上での見え方です。ほんとうは、設定したサイズで見てはじめてその尺度の見え方になります。A1であればA1プロッターで出力した紙で出したものが正なのです。
ですが、実情的には発注図面や施工図面もPDFのやりとりがほとんどだと思います。
ですので、PDFで認識できるのであればそこまで神経質に考える必要はありません。
次回からは、絶対線種尺度を決める「グローバル線種尺度」のお話に入りたいと思います。
線種設定を操り見栄えのよい線を引きましょう。
線種尺度に関する全てがここに記してあります。
・【AutoCAD】線種設定の研究