CADに限らず、土木の数量計算書や積算の設計書などをチェックしていると、ほぼ、9割の書類に共通していることがあります。自分の書類もそうですし、他の人が作った書類も同じ事が言えます。
それは、最初のほうに致命的な誤りがある、ということです。おもしろいですが、なぜか最初で躓(つまづ)いてしまっていることが多いのです。
今回のお話も、最初に確認しておいたほうがよいことになります。というよりも、筆者のほうで最初に説明しておくべき事項でした。
目次
長さの単位「インチ」と「メートル」
いままで、線種設定の記事を6本リリースしました。読んでいる人がわかるように、公式用語にはない「絶対線種尺度」などと偉そうなネーミングまで付けて説明しました。
ですが、読んでいる人の中には、同じ操作をしても、同じようにならない、という人がいるはずです。
線種尺度における「最初のワナ」が実は潜んでいたのですが、説明をしていなかったのです。
特に「間違い」というわけではありません。ですが、この事を知らないと、「同じ土俵」で話ができないのです。
実は、線種尺度を決める前の話として、扱う線の「長さの単位」というものがあります。
AutoCADで用意された線自体が「メートル」か「インチ」どちらかを使って表現されている、という事です。
その用意された物(メートルかインチ)に乗っかってわれわれは線を書いているのです。
要は、メートルとインチで「線の見え方」が違ってくるのです。
ほとほと、AutoCADはこのあたりが難解すぎます。
[メートル」,「インチ」単位の線種尺度を使用した図面
線種尺度における、長さの単位に「メートル単位」で書いた図面を見てみましょう。
図面番号_01とします。

これに対して、「インチ単位」の線種を使って書いた図面が図面番号_02となります。

図面番号_01,図面番号_02でずいぶん線の見え方が違うことが確認できると思います。
線種尺度と、いままで議論してきた「絶対線種尺度」が同じにも関わらず、見え方が違います。
例えば、線種尺度1000を取ってみると、よくわかるでしょう。図面番号_01は、くっきり点線ですが、図面番号_02は、連続した線になっています。

「メートル」と「インチ」でこれだけ違いが出てくるのです。
目次に戻る←←←「メートル」と「インチ」違い
※この項は、「メートル」と「インチ」で違いが出てくるよ、ということがわかれば、理解できなくても全く大丈夫です!なんなら次へ読み進めていただいてかまいません。
このブログを読んでいるほとんどの方は、「メートル」(ミリメートル単位も含む)で図面を書いていると思います。
そういう方(筆者もですが)から言わせると、「インチ」なんて最初から用意してんじゃねえよ!と、暴言を吐きたくなります。難解なAutoCADがさらに遠いところに行っているように感じるからです。
ですが、AutoCADを作っているAutodesk社がそもそも「インチ」を使うアメリカですので仕方がないことなのです。
それにしても、尺度で全てをコントロールするソフトでインチやメートルという単位を使うのはおかしな気もしますが。。。
「メートル」と「インチ」の間には、以下のような違いがあります。

長さ1単位、線種は、点線(DASHED)、長さの単位「インチ」で1単位の線を引きました。線の間隔は、1のとき「0.25」です。

対しまして、これを「メートル単位」の長さの単位を使うとどうなるでしょう。1インチのときに0.25の間隔ですから、1ミリのときは、「0.25×25.4=6.35」となる理屈となります。
6.35ですから、1より長いことから、長すぎて表しきれません。そこで、20の長さの線を書いて検証しました。10で最初に書いたのですが、点線になりませんでした。

点線の間隔を計測すると、6.35になっていることが確認できます。
※検証として書きましたが、いちいち、0.25や6.35やインチとメートルの関係などを覚える必要は全くありません。
目次に戻る←←←線種尺度の「長さの単位」確認方法
はて?では自分の書いている図面は「メートル」の線?それとも「インチ」の線?というのが問題となります。
確認する方法は、「線種管理」をダイアログボックスを開きます。「LINETYPE」とタイピングしてもよいです。
ロードというボタンを押すとファイル名が出てきます。そのファイル名で判定いたします。
「acad iso.lin」または、「acadltiso.lin」ですと、メートル単位です。後方に、isoと付いていない、「 acad.lin」 または、 「acadlt.lin」ですと、インチ単位ということになります。

まとめと注意点
線種尺度にも、2つの計測単位「インチ」「メートル」があることがわかっていただけたでしょうか。
これまでの記事と同じ操作や尺度にしても、見え方が同じにならない場合、扱っている図面が「インチ」単位になっている可能性があります。
「えっ、わたし、ミリメートル単位で書いてるのに、線が「インチ」になってたらまずいんじゃね?てか、根本的にダメなんじゃね?」
と、新たな不安を抱いた方もいらっしゃるかもしれません。
「インチ単位」になっていても変換する必要はない
結論から言うと、ミリ単位で書いている図面において「インチ単位」になっていても、わざわざ「メートル単位」に変換する必要はありません。
発注者から受領した図面が仮に「インチ単位」の線種尺度になっている場合も、そのままいきましょう、ということです。点線間隔を調整する必要があれば、絶対線種尺度の決定要素(グローバル線種尺度、オブジェクトプロパティ管理の線種尺度)を調整してあげればよいのです。
単に、「インチ単位」の線種尺度で書かれているだけであって、間違いではないのです。
前に記事で書いたように「点線なら点線と認識できればよい」のです。
やろうと思えば、線種管理ダイアログボックスから「メートル単位」の線種ファイルを読み込めばできます。しかし、今まで書いた点線の単位は変わりません。ですので、全く同じ線種設定なのに、点線間隔が違う、という混在状態になってしまいます。こうなると、絶対線種尺度で話に整合を持たせることができなくなってしまいます。

出だしの根本的な設定のような気もしますが、かなりマニアックな設定の類いです。正直「CADラー」と言われる人でもこの設定を知らない人が、多数いると思われます。
以前のAutoCADだと、デフォルト(初期設定)自体が「インチ単位」になっていたような記憶もあります。それくらい気にしないで進んでしまうのです。
ほんとうの新規に図面を作成する場合、線種管理ダイアログボックスから設定できますので、「メートル単位」に設定してもいいかもしれません。
しかし、ある一定の成果物として、配布されたデータが「インチ単位」になっているのであれば、そのままのほうがよいのではないでしょうか。
線種尺度を語る上で注意すべきこと
AutoCADは、日本の土木の業界ではおそらく「デフォルトスタンダード」だと思われます。
役所でも施工者でも設計事務所でも使用してない、という事業所を(筆者は、全く)見たことがありません。
その割に複雑すぎて、マニアックで誰も知らないような設定やコマンドが(超)たくさんあります。
なぜ、そんなソフトが使われているんだろう、と思うことも正直あります。
しかし、それだけ自由度がとてつもなく広いということを意味します。実現できることが多いのです。
線種尺度を事業所内や共通に編集する人々と語る上で、大事な点を以下の図にまとめました。
これらの事項の言葉の認識が共有されていないと、どこかで齟齬が生じます。

ここまで説明しておいて、身も蓋もない話ですが、本来、絶対尺度という一つの尺度を作るのであれば、「長さの単位」からの換算から印刷尺度までとするのがよかったのかもしれません。
しかし、話が複雑になるので、そこまでは考慮しませんでした。
今回のお話で、線種設定のほとんど一般的な事柄をフォローしたのかな、と思っています。
次回は、さらに難解な機能「尺度設定にペーパー空間の単位を使用」を説明いたします。
お楽しみに!
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線種設定を操り見栄えのよい線を引きましょう。
線種尺度に関する全てがここに記してあります。
・【AutoCAD】線種設定の研究